【読み物】担当マネージャーがこっそり(?)お知らせする、和田唱2ndアルバム「ALBUM.」ジャケ写の完成の秘密
今回、既出の森田恭子さんのインタビュー(LuckyRaccoon_note vol.1)で和田が答えているが、デビュー当時、スタッフ間では、「媒体での親子の話は基本NG」が鉄則だった。レコード会社のスタッフは取材や生放送の前に必ず先方にくぎを刺したものだった。 (本人は「べつに俺が言ったわけではない。ただ、その話が出るとあからさまに機嫌が悪くなる俺を見てスタッフが気を使ってくれた」と当時を振り返り教えてくれた。)
親子でメディアに出たのは、2013 年 6 月 8 日の毎日新聞の「親子の日」でお母さまの平野レミさんとふたりで新聞紙面を飾ったのが初だったと記憶している。
(※https://oyako.weblogs.jp/より引用)
その名の通り「親子」企画での大きな写真と、新聞社の担当記者がキャッチに選んだのは「嫌いなことはやることないよ」だった。レミさんが和田唱をどうやって育てていらっしゃたかが良く分かる一文である。 父上の和田誠さんとは 2016年1月25日、和田誠事務所にてイラストレーション(玄光社)という雑誌の企画で 「絵を描くこととレコーディングは似ている?」と題した対談を行なっている。これは幼少期、和田少年が父親とどう接してきたかから始まり、音楽や映画の話に展開する、とても読み応えのある対談となった。
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※是非ご覧ください
和田誠・和田唱対談 「絵を描くこととレコーディングは似ている?」
【前編】 https://i.fileweb.jp/news/topics/2824/
【後編】 https://i.fileweb.jp/news/topics/2869/
※イラストレーション(玄光社)WEBより
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レミさんとの新聞紙面の話が来た時、和田唱は「おふくろがやりたいなら、まぁ、そろそろこういうのも親孝行ですからね。」と語っていた。お父様との対談は「母が推してるんですよ、この企画。絶対やるべきだって」とちょっと照れたように僕に GO サインを出した。
誰にも親がいて、子も親も平等に歳を重ねていく。あのとき「こういうのも親孝行ですからね」と語った和田唱は37歳。既にデビューから 16年の年月が経っていた。息子と母親というのは、父親とのそれとはまた違う、 独特の「やわらかな強い絆」のようなものがあって。どんなに幼い時のことでも「あの時、母親は俺にこう言ってくれた」とか「こういう風に守ってくれた」とか具体的かつ鮮明に覚えていたりするものである。(だからと言って意を決して、「あの時こんな風に言ってくれたんだよ」、なんて言っても「そんなことあったかしらねー」なんてかわされることも多い。母と子っていうのはそういうものである)。ともあれ「母親と息子」というのは、この独特の「やわらかな強い絆」で繋がっていて、いつの世もいい関係である。
今回、何回目かのデザイナーとのジャケットミーティングに和田唱が大きくカラーコピーされた1 枚の写真を持参してきた。それがこのジャケットの写真であった。「実家のピアノの上にぽんと置いてあってさー。母が引き出しの整理してたら出てきたみたい。親父がこの写真を気に入ってて、こうやって大きくコピーしてあったんだと思う。」カメラ目線の笑顔の母親と、風船を大事そうに持って写真どころではないのか、はたまたおすまししているのか、の和田少年。広い構図の中の緑と赤い服の対比が素晴らしい、スナップとは一線を画した写真である。「これ親父が撮ったんですよ。ジャケットに使ったらきっと母も喜ぶんじゃないかなぁ。」 次回のミーティングでは大量の幼少期のアルバムを持参しこの元の写真を見つけ、インナー用の写真もセレクト。今現在の和田も押さえようと、当時の撮影場所を探し出して追撮し、デザインを進めていった。
※本当はこのジャケット写真、店着日のレコード店の棚で公開したかったんです。お店がこんなに閉まるとは…。残念。
撮影終わりの移動の車の中で「本当にこの写真、使っていいの?」という僕に「前作の時もそうでしたけど、なぜか俺がジャケットどうしようって考えてるときに、実家のピアノの上にいい写真がポンと置いてあるんですよ。今回はなんだか親父が”こんなのあるぞ”ってこの写真と引き合わせてくれたように思えて。」と話す和田唱。このジャケットを見て、今、読まれている皆さんにも『親孝行』に気付いてもらえたらいい。電話一本入れるとか、写真一枚飾るだけでもいいと思う。そんなことも話していました。
悲しい出来事を乗り越えて、制作されたこのアルバムを飾るジャケットには、こんなエピソードと想いが込められているのでありました。
未曽有の昨今ではありますが、音楽を聴いて、皆様が少しでも楽しい時間を過ごして頂けたら幸いです。お読みくださりありがとうございました。
2020/4/21 TRICERATOPS マネージャー 大森洋